世界遺産が生まれたのは、
1960年代にエジプトのナイル川流域に建設計画が持ち上がった
アスワン・ハイ・ダムがきっかけでした。
このダムが完成すると、エジプト南部のナイル川流域にある、
アブ・シンベル宮殿からフィラデルフィアまでのヌビア遺跡群が
ダムの底に沈んでしまうことになります。
そこで、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、
ヌビア水没遺跡救済キャンペーンを開始したのです。
世界60カ国の支援によって、考古学調査が行われた結果、
ヌビア遺跡内のアブ・シンベル神殿は移築されました。
そして、このキャンペーンをきっかけにして、
歴史的価値のある遺跡、建築物、自然などを、
国際的に保全していこうという機運が生まれたのです。
1972年、ユネスコのパリ本部でユネスコ総会が開かれ、
「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」
が満場一致で成立しました。
この条約に基づいて登録されたものが世界遺産です。
文化遺産は、優れた普遍的価値をもつ建築や遺跡などで、
自然遺産は、優れた価値をもつ地形や生物、景観をもつ地域です。
また、危機遺産は、危機にさらされている世界遺産で、
後世に残すことが難しくなっているものです。
その他、戦争や人種差別など、
人類が犯してしまった罪を証明するものも、
「負の世界遺産」として登録されています。
世界遺産リスト登録の第1号は、アメリカのイエローストーンや、
ガラパゴス諸島などの12件です。(自然遺産4、文化遺産8)
エジプトのヌビア遺跡群も、
1979年に世界文化遺産として登録されました。
また、日本がこの世界遺産条約を批准したのは1992年のことです。