2010年11月19日金曜日

負の世界遺産

世界遺産に登録されている遺跡や景観、自然というものは、
「人類が共有すべき普遍的な価値を持つもの」とされています。

一方で、戦争や人類差別など、人類が犯した罪を証明するものも、
逆の意味で私たちに忘れてはならない教訓を伝えています。
これらは「負の世界遺産」として登録されています。

たとえば、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所は、
ナチス・ドイツがユダヤ人を虐殺した強制収容所で、
現在のポーランドにつくられたものです。

南アフリカ共和国のロベン島は、
周囲の海流が強く、脱出が困難なことから、
政治犯の監獄として使われていました。
後に大統領となったネルソン・マンデラ氏も収容されていました。

他にも、奴隷貿易の拠点だったセネガルのゴレ島や、
タリバンに破壊されたアフガニスタンのバーミヤン渓谷の遺跡、
そして、日本では広島の原爆ドームが登録されています。

こうした負の世界遺産と呼ばれるものは、
人類が犯した悲惨な出来事を人びとの記憶にとどめ、
二度とその過ちを繰り返さないようにするために登録されました。

教育や文化の振興を通じて、戦争の悲劇を繰り返さない、
というのがユネスコ設立の理念です。
そして、ユネスコ憲章の前文には、
「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、
人の心の中に平和の砦を築かなければならない」とあります。